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2025.11

AIが整えたのはタスクではなく、“物語を生む余白”だった

AI

クリエイティブ

ゲーム

ゲーム開発のシナリオ制作は、作品の世界観や物語を形づくる“心臓部”の仕事です。
けれど実際の現場では、クリエイティブな作業に入る前に、膨大な「情報整理」や「文字校正」「推敲」などの裏方業務に追われることもしばしば。
そんな“クリエイティブの前段階”にAIを導入したところ、驚くほどの変化が起きました。
作業の工数は減り、浮いた時間と頭のリソースを、物語づくりそのものに注げるようになったのです。
この記事は、シナリオチームが体感した「AIが掃除してくれた余白と、そこに生まれた創造の時間」について紹介します。

シナリオチームが抱えていた“重たいノン・クリエイティブな仕事”

シナリオチームの業務は多岐にわたります。

・世界観設定及びその保守の為の指針設計や監修
・ストーリー原案 及び執筆
・外部ライターを使ったストーリー作成ディレクション、推敲
・その他収録の立ち合いや、シナリオ関連の指示書作成やスケジュール管理等々

物語設計の裏側では、情報整理や文章統合などの“ノン・クリエイティブなタスク”が山ほどあります。
これまで本来の「創造」にたどり着く前に時間と集中力を消耗してしまう――
そんな課題が長らくありました。

要約・共有作業にAIを投入 → 工数約8割削減!

そこで導入したのがAI。
「シナリオ文字校」「あらすじ作成」「アイデアのきっかけ出し」など、思考の下支えを担う業務にAIを組み込みました。

特にあらすじ作成では、要約から共有用の整形までを自動化することで、共有業務の工数を約8割削減。
結果として、他部署への説明や社内共有がスムーズになり、スタッフが“本当に時間をかけたい部分”に集中できるようになりました。

“アシスタントがサポートしてくれることで、ディレクターがよりプロジェクトの指揮に専念できる”――そんな感覚に近い変化です。

“副作用”ならぬ“副効果”。AIが生んだ自由な発想空間

次にAIが活躍したのは、「アイデアのきっかけ出し」の場面です。
何かの背景や名前を決める際、初期段階では質より量(発想のきっかけ)が求められるため、ここでも重宝されましたが興味深いのは、AIが単なる効率化ツールにとどまらなかったことです

“AIは気を遣わない同僚”だった

「アイデアのきっかけ出し」の場面では、思わぬ副次効果が生まれました。

「人に頼んで“全部ピンとこない”とは言いづらい。でもAIならいくらでも試せるし
気兼ねがない分、発想が広がる。」そんな声がチーム内から上がりました。

この心理的な気軽さが、チームの発想力を大きく解放し、
結果、これまで眠っていた発想の種が芽吹き、“意外性のある提案”が飛び出す場面も増えました。

業務の“整理係”から“パートナー”へ

現在、チームではAIのさらなる活用を検討しており、
これまで蓄積してきた膨大なシナリオデータや設定資料をAIに学習させ、キャラクター呼称や設定の整合性チェックといった監修業務への応用を目指しています。

これにより、世界観を保ちながら、作業の抜け漏れを防ぐことができる為、作業効率は大幅に短縮される見込みです。
ただし課題もあり、監修AIの運用には複数チームとの連携が不可欠であり、完全に“AIに任せる”ことはできません。各チームで責任者を置き、判断や確認の最終ラインを人が担う体制が求められています。

それでも、人間の確認作業は格段にスムーズになりました。
以前は膨大な資料を前に“探すだけで一日終わる”こともありましたが、今ではAIが候補を数秒で提示してくれる。
もはや単なる効率化の道具ではなく、物語づくりを陰で支える“パートナー”と呼べる存在です。

次のチャレンジは、“表記ぶれ”をAIに任せられるか

今、チームが見据える次のステップは「設定情報の表記ぶれ監修」へのAI活用。
過去のシナリオや設定資料をAIに学習させ、キャラクターの呼称整合性や設定のぶれを自動チェックする仕組みを構想中です。

これが実現すれば、クリエイターは世界観維持のための文字校正から解放され、より大胆で自由な構想にエネルギーを注げるようになるでしょう。

AIが整えるのは、作業の効率ではなく“創造の余白”。
シナリオ制作の現場は、いま確実にその方向へと進化し始めています。

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